厚生労働省は2024年7月8日、「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を一般医療機器の分類として追加し、「特定保守管理医療機器」と指定しました。
これにより、従来の医用画像表示ディスプレイ(以下、”医用モニター”と略)のうち、一定の条件を満たし登録したものを医療機器とすることとなりました。
では、従来の医用モニターは使用できなくなるのでしょうか。
そこで、「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」、「特定保守管理医療機器」とは何か、また今回の告示による変更点や影響について解説します。
現在販売されている"医用モニター"もしくは”医用ディスプレイ"と呼ばれる製品は、単体では医療機器として取り扱われていませんでした。
そのため、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)適用の対象とはならず、保守管理等は学会等が作成したガイドラインを元に各医療機関施設によって実施・運用されていました。
しかし、医療現場での保守管理の重要性及び医療機器であるフィルム(画像診断用イメージャ)の代替となるデバイスでもあるという背景より、今回の医療機器の告示※1がされました。
※1:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第五項から第七項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器の一部を改正する件(令和6年7月8日厚生労働省告示第240号)、
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第八項の規定により厚生労働大臣が指定する特定保守管理医療機器の一部を改正する件(令和6年7月8日厚生労働省告示第241号)、
医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令第五条の五第三項の規定に基づき製造管理又は品質管理に注意を要するものとして厚生労働大臣が指定する一般医療機器の一部を改正する件(令和6年7月8日厚生労働省告示第242号)
モノクロのデジタル画像にて診断を行うディスプレイが対象となります。
ここで対象は「モノクロディスプレイのみ」と誤解をされるかもしれませんが、カラーディスプレイも含まれます。
「”モノクロ画像”にて診断すること」が対象となっており、”モノクロ画像”をカラーディスプレイに表示させて診断する場合には対象となります。
クラス分類告示 | 特定保守告示別表 | 設置管理告示別表 | 類別コード | 類別名称 | 中分類名 | コード | 一般的名称 | 一般的名称定義 | クラス分類 | GHTFルール | 保守管理 | 設置管理 | 修理区分 | 旧一般的名称コード | 旧一般的名称 | 旧クラス分類 | 旧修正種別 | |||
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別表第1 | 別表第2 | 別表第3 | ||||||||||||||||||
1227 | 1248 | 器09 | 医療用エックス線及び 医療用エックス線装置用エックス線管 |
診断用X線関連装置 | 36612001 | GSDFキャリブレーション機能付き 画像診断用ディスプレイ |
モノクロ医用画像表示用で、 DICOM規格のGSDFの階調特性に調整する キャリブレーション機能を持つものであって、 それにより画像表示の一貫性を確保し、 マンモグラフィ、CTやMRI、CRなどのデジタル画像を 表示して診断に用いられるものをいう。 |
Ⅰ | 12 | 該当 | 非該当 | G1 | G1 |
一般的名称の定義 (令和6年7月8日厚生労働省医薬局長通知 医薬発 0708 第1号より)
医療機器のうち、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とすることからその適正な管理が行われなければ疾病の診断、治療又は予防に重大な影響を与えるおそれがあるものとして、適正な管理が厚生労働省厚労省より指定されているものです。
ディスプレイについては、精度管理などが対象となります。
DICOM Part 14におけるGSDF(Grayscale Standard Display Function)で規定された輝度特性カーブに調整(キャリブレーション)する機能です。
・DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)
医療におけるデジタル画像および通信に関する標準規格。Part1~Part16で構成されている。
・GSDF(Grayscale Standard Display Function)
DICOM Part14で規定されている輝度特性。
・キャリブレーション
光学センサー等(輝度計など)を用いてディスプレイの輝度特性・色度等を目標値と一致するように調整すること。
DICOM GSDFは、人間の視覚特性に基づいた階調カーブで、どの階調間も同じ輝度変化として知覚できます。
これに対して一般モニターの階調カーブであるガンマ2.2は、低輝度領域で階調が強調され、中輝度から高輝度領域は階調が圧縮されて表示される傾向にあります。
画像診断においては画像表示の一貫性が非常に重要であるため、DICOM GSDFに調整できる必要があります。
DICOM GSDFと一般的な階調カーブの比較
今回の告示および通知※2では、新たに「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を医療機器として位置付けることとしつつ、「画像診断に用いるディスプレイについては必ずしも医療機器である必要はなく、引き続き、学会等が作成した画像診断に必要なディスプレイに関するガイドライン等で示される解像度や輝度、表示階調特性などを踏まえ、各医療機関において適切なディスプレイを選ぶことで差し支えないことを申し添えます。」としています。
つまり、医療機器として登録を受けた「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」への切替や使用を強要するものではなく、あくまで従来の医用モニターを使用するか、もしくは医療機器として登録された「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を使用するかは、医療機関が判断して決めることとなります。
※2:一般社団法人日本画像医療システム工業会の作成した「GSDF キャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイの自主基準」について(令和6年8月6日医薬機審発0806第1号)
今後、詳細について公開して参ります。
医療機器としての「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」は、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)適用の対象になることで、従来と比較してより厳格な規制が適用されることになります。また、「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」は医療機器のうち「特定保守管理医療機器」に指定されているため、使用中の安全性や有効性を確保するための適正な保守管理が求められます。
従来の医用モニターを使用するか、もしくは医療機器として登録された「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を使用するかは、医療機関が判断して決めることとなります。
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