ポータブル電源の中身はリチウムイオン電池と呼ばれる電池です。スマートフォンやモバイルバッテリーと基本的に変わりません。
同電池は使っていくうちに劣化していくことは、スマートフォンなどで体験済みだと思います。ただし、注意が必要なのは、「使わなくても劣化していく」ということです。スマートフォンのように頻繁に充電することがなくても、スマートフォンほど急激にではないけれど、ゆっくりと劣化していきます。
それでは、どうすれば長持ちさせられるの? という疑問が起こりますよね。
基本は、スマートフォンなどと同様です。ただし、スマートフォンとポータブル電源では、使用時間の長さや充電の頻度が異なります。特に、スマートフォンがほぼ常時利用するものに対して、ポータブル電源はアウトドアや非常時など、限定された使い方をする方が多いです。
そうしたポータブル電源ならではの利用法や保管法を解説していきたいと思います。ポイントは、人間と同じように少し気を遣ってあげようということです。
解説する前にもう1つ心に留めておいて欲しいことがあります。以下に挙げる利用法や活用法は、あくまでもベターな利用法や活用法です。キャンプや緊急/非常時に直面した環境によっては、必ずしもできないこともあると思います。そうした場合でも、すぐに不具合が発生したりバッテリーが使えなくなるような、ヤワな作りではないので「絶対に守らなきゃいけない!」と思い込み過ぎずに読んでいってください。
ポータブル電源は、高温多湿な環境を嫌います。特に暑い時期に直射日光が当たる場所に置いて使うと、内蔵されたリチウムイオン電池が熱くなります。熱を持ったまま使ったり置きっぱなしにするのは、電池劣化の原因になります。
ではどんなところで利用すべきかと言えば、人間と同じく、涼しくて風通しの良い場所です。リチウムイオン電池が最も性能を発揮するのは、25℃前後の環境だと言われています。
特に屋外で使う場合には、ポータブル電源のそばに行き「うわぁ〜、めっちゃ暑いなぁ」と、自分が汗をたらたらと垂らすような環境であれば、日陰に移すなどの心遣いをしてあげてくださいね。
同様に寒すぎる場所も苦手です。これも、人が氷点下の場所に行くと、身体中がこわばって動きが鈍くなるのと同じです。特にポータブル電源に限らず、電池全般に言えることですが、低温環境下では電池の使用時間が短くなる点も、覚えておきましょう。
※繰り返しますが、上記はあくまでも理想的な環境ということです。例えばJVCのポータブル電源であれば、-10℃~40℃の環境で安心して使えます。
屋外で利用するときにも、できるだけ高温多湿の環境を避けて、木陰などの涼しい場所に置きましょう
主にスマートフォンで、都市伝説のように根強く言われているのが、「継ぎ足し充電は、バッテリーの寿命を縮める」という説です。
リチウムイオン電池の場合は、そうした事実はありません。
また、同電池の特性として、「00%以下になる前に、充電をしておくと、電池寿命の減衰が防げる」と言ったことを聞くことがあるかもしれません。
これも、気にするほどの性能劣化にはつながりません。あえて言えば、「バッテリー残量が、40%前後で最も性能を発揮する」という事実がありますが、それ以外の残量では性能を発揮しないわけではありません。
そのほか、ポータブル電源などリチウムイオン電池を使用した製品仕様に、「充電回数」という項目があります。例えば「充電回数:500回」とある場合、どう充電回数を数えるのか? と疑問に感じるかもしれません。
この充電回数とは、ポータブル電源を何回充電したかではありません。これは実際に使った(放電した)バッテリー容量の合計が100%になった時点で1回となります。
例えば、バッテリー容量が10万mAhのポータブル電源があるとします。初めに10万mAhを充電します。1度に残量ゼロになるまで使ったら、充電回数は1回になります。
そうではなく、1度目に5万mAh(50%使用)を使った後に5万mAhを充電したとします。この場合、充電回数は1回になりません。この後の機会に3万mAh(30%使用)を使い、また帰宅後に充電したとしてもまだ充電回数は1回になりません。さらに別の機会に2万mAh(20%使用)使うと、ここで初めて充電回数が1回としてカウントされます(50%+30%+20%=100%使用=充電回数1回)。
そうしたことからも、過度にバッテリー残量や充電回数などを気にせず、充電できるタイミングや充電すべきタイミングで、充電するようにしましょう。
もし仕事の上司から「あれもやって、これもやっておいてよ!」って指示されたら、あわあわしてしまいませんか?
ポータブル電源に内蔵されているリチウムイオン電池は、マルチタスクに対応していますが、本当のところは避けてあげたいです。
どういうことかと言えば、電気の入力と出力を同時に行なわない方がベターだということです。例えばポータブル電源に内蔵されたリチウムイオン電池を充電しながら、バッテリー非搭載の家電製品に給電したり、バッテリー内蔵の他機器を充電するといった、一般的にパススルーと言われる使い方です。
可能ではあるけれど、推奨はしませんということです。そうした使い方は、電池に負荷がかかり、寿命が短くなるのを早めます。
同様に、ソーラーパネルでポータブル電源を充電しながら、ポータブル電源から他機器に給電や充電をするのも負荷を掛けてしまいます。
ポータブル電源本体を充電しつつ家電製品などに給電するのは良くない
「あぁ〜今日は食べ過ぎたぁ〜」と言った満腹時に就寝するのは、不健康だってことは、誰もが知るところでしょう。寝る数時間前までには夕飯を済ませておきましょう、と言われることが多いです。逆に「腹減ったぁ〜」といった状態で寝る日が続くと、たくさん食べられなくなります。
ポータブル電源も、バッテリーが100%や0%の状態で、何カ月もの長期保管するのは避けたいところです。それは電池の劣化を早めたり、性能を低下させるからです。特に残量ゼロでの長期保管は、再充電ができなくなる場合もあります。
ではリチウムイオン電池の劣化が、最も少ないのはどのくらいかと言えば、残量40%前後と一般的に言われています。
ただし、ポータブル電源を使う機会がしばらくなさそうだから「40%前後で保管しよう」となると、また話が変わります。というのも、ポータブル電源は6カ月(半年)で約20%が自然放電されます。残量40%で保管すると、半年後には20%、そのまま1年が経過した場合は、残量がゼロになってしまう計算です。これでは少なすぎです。
また、もし保管期間に停電などの非常事態が発生した場合、せっかくポータブル電源を持っているにも関わらず、バッテリー残量が少なすぎて使えない、といったことになりかねません。
そこで推奨したいのが、60〜80%前後での長期保管です。これなら6カ月放置していても、40〜60%はバッテリーが残っていることになります。保管する上でも適した残量ですし、非常時でも対応できる残量です。
適した残量を維持できるよう、最低でも半年に一度はチェックしましょう。
とはいえ、より良い方法は、1カ月に1回くらいの頻度で、ポータブル電源を使うことです。その際に、問題なく本体の充電が行なえ、他機器に給電できるかなど、動作の確認をしましょう。定期的に使ってポータブル電源の使い方に慣れておけば、非常時などにも慌てずに済むはずです。
※ポータブル電源の保管時にはACアダプター、シガーアダプター、ソーラーパネルをつないだままにしないでください。
これらをつないだままにすると、常に放電と充電を繰り返すことになるため、電池が早く劣化する原因となります。
長期保管する前には、60~80%の残量にしておくと良い
前述の通り、ポータブル電源はもちろんリチウムイオン電池を内蔵した機器は、熱いのも寒いのも苦手です。保管するにおいて適温と言われているのが25℃前後なので、だいたいエアコンの設定温度と同じですね。さらに湿度が高すぎたり、ホコリが多い場所も避けたいです。
つまり自分たちが、快適だなって感じる環境で保管するのが、電池の劣化を防ぐ上でも良いということです。自宅で言えばリビングや居間が、最も適した環境になるでしょう。ただし、そうした場所に常に置いておくのが嫌だとか難しい場合もあるでしょう。その場合は、玄関や廊下などに置くと良いかもしれません(環境によって異なるので、玄関や廊下が高温または多湿、低温環境の場合は適していません)。
高温多湿や低温環境を避け、直射日光の当たらない涼しく風通しの良い場所で保管するのが一番良いです
寒い季節以外では、家の中でも高温多湿になりやすいです。保管場所が、そうした環境ではないか、気にかけるようにしましょう。
ただ逆に、寒冷地の寒い季節には、ポータブル電源が冷えすぎないようにする必要があります。前述の通り、冷やしすぎると充電容量の低下を招きます。冷やし過ぎる心配がある季節になったら、梱包材の中に入れて保管すると良いですよ。
購入後は梱包から出して、涼しい場所に保管しましょう。逆に、寒冷地の寒い季節で保管する場合は、梱包材などを使って、本体が冷えすぎないよう気を付けましょう。
以上、今回はポータブル電源の劣化速度を抑える利用法や保管法を解説してきました。
それぞれの利用環境や目的、非常時での活用も加味すると、一概に「こうすべきだ」とも言えません。ただ、人が活動したり休憩したりするのに適していない環境や使い方は、ポータブル電源も苦手だということは覚えておきましょう。
「あっ? いまこのポータブル電源くんは、つらそうだなぁ」って感じたら、使う場所や使い方、保管する場所などを改めてあげましょう。そうすることで、より長く性能を維持でき、利便性を感じながら使えるはずです。
※画像はBN-RB10-Cを使っています。
※本機を不安定な場所に置かないでください。必ず、平坦で安定した場所に置いて使用してください。
※本機の通風孔は、安全上絶対にふさがないでください。また、本機の各面から5cm以上スペースを空けてください。
※心臓にペースメーカーを装着している方は使用しないでください。ペースメーカーが、本機の影響を受ける恐れがあります。
※本機は防塵・防水仕様ではありませんので、ほこりや水、海水などがかからないように注意してください。また、手がぬれた状態で本機を操作しないでください。降雨時、降雪時、降霜時の使用は、事故や故障の原因となりますので、ご注意ください。
※給電する機器の充電制御や充電状況、環境などにより給電できない、または急速充電にならない場合があります。
フリー編集ライター
河原塚 英信
HIDENOBU KAWARAZUKA
デジタル系トレンド情報誌の編集者を経て、フリーランスの編集ライターへ。
カメラやスマートフォン、ドローン、VRなど、デジタル製品全般とSNSなどのWebサービスに精通。雑誌やWebサイトで執筆中。
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