2021 October
イヤホンには「ドライバーユニット 」(以下ドライバー)というパーツが必ず搭載されています。送り込まれた音声信号と磁石の力で振動板を動かして空気を動かし、音声信号を音に変換するパーツです。まさにイヤホンの心臓部と言えます。
そのドライバーのスペックとして最もわかりやすく重要度も高いものが「振動板の口径」です。
ここでの「口径」は、一般的には円形である振動板のその円の直径を示しています。スペックが「口径8mm」なら、そのドライバーは直径8mmの振動板を持っているというわけです。イヤホンの振動板としては5-6mmあたりが小口径、10mmを超えたら大口径といったところが目安になります。
ではその振動板口径の大小で何が変わるのでしょう?違いは音質面にもイヤホン全体の設計にも表れます。
音質面でのいちばん大きな違いは「口径が大きいほど低音再生に有利」ということです。例えば、楽器ってヴァイオリンとコントラバスのように、高い音を出す楽器は小さく、低い音を出す楽器は大きく作られていますよね。空気を動かして音を出すことにおいては基本的に、大きな装置ほど低音を出しやすいのです。
振動板も、口径が大きいほど少しの動きでたくさんの空気を動かすことができ、それが低音再生において大きな優位となります。その上、イヤホンに搭載できる範疇の大口径でなら、高音の再生能力が不足することもありません。
例えば「HA-XC91T」は12mmという大口径ドライバーを搭載、重低音再生を得意とするモデルですが、高域再生能力もしっかり確保されています。大口径振動板は「低音再生に有利で高音再生も別に苦手じゃない」という、実に嬉しいスペックなのです。
しかし大口径ドライバーに 弱点がないわけではありません。振動板の強度維持などドライバー設計の難しさも出てきますし、イヤホン全体の設計においては、ドライバーというパーツの大型化はあらゆる面で厄介です。
まず、ドライバーが大きくなれば本体サイズも大きくなり、耳への収まり (装着感)のよさを確保するのに様々な工夫が必要になります。
また、完全ワイヤレスは筐体サイズにどうしても制限が出てきますが、「ドライバーを大きくした分バッテリー 搭載スペースが減って再生時間が短くなっちゃいました」では困りますよね。どうにか工夫して再生時間も確保しないといけません。
逆に小口径ドライバーはそれらの点で有利。イヤホン全体を小型化しやすくハウジング形状の自由度も高いので、装着感のよい筐体に仕上げやすいですし、バッテリースペース確保も難しくありません。
低音再生能力の面も設計次第で対応できます。動かす空気の量を振動板口径の大きさで稼げない分、振動板を動かすストロークの長さを増やすなどですね。
というように、ドライバー口径の大小は、音質からトータル設計まで、イヤホンの様々な要素に大きく影響します。ですから、どんな口径のドライバーを採用しているかに注目してみると、そのイヤホンの設計意図の一端が見えてくるかもしれません。
高橋敦
Takahashi Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。
趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。
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