雑学コラム

ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.15

「再生周波数帯域」が広いイヤホンやヘッドホンほど音がいいの?

雑学コラム ヘッドホン・イヤホン豆知識 vol.15

「再生周波数帯域」が広いイヤホンやヘッドホンほど音がいいの?

2022 January

イヤホンやヘッドホンのスペックや仕様の欄に表記されている項目やその数字って、やっぱり気になりますよね。中でも「再生周波数帯域」はその数値の意味の分かりやすさもあって、特に気になるのでは?

 

でも「スペックは数字にすぎない!そんなもので真の実力は計れない!」なんて話はどんなジャンルでもありがち。実際、イヤホンやヘッドホンの「再生周波数帯域」から音の良し悪しや特徴を判断することはできるのでしょうか?

 

まずは「再生周波数帯域」の確認から。

 

<再生周波数帯域>
表記と単位:◯Hz~◯Hz
例)20Hz~20kHz、8Hz~52,000Hzなど

 

というスペックですね。おおまかには「どれだけ低い周波数の音からどれだけ高い周波数の音までを再生できるかを示すスペック」という理解でOKです。「20Hz~20kHz」だったら「低い方は20Hzの音から高い方は20,000Hz=20kHzの音まで再生できる性能を備える」ということになります。

 

ですので基本的には、「5Hz~50kHz」のようにとても低い音からとても高い音まで再生できるスペックを備えるイヤホンやヘッドホンの方が性能的には優れている、と考えるのは間違いではありません。ですが注意すべきは、再生周波数帯域で示されるのは再生周波数帯域の高低両端の値だけで、その幅の中での特性の良し悪しなどは別問題ということ。

 

例えばもしも「5Hzの超低音も50kHzの超高音も再生できるけれど、150Hz付近の再生音量がグッと持ち上がって10kHz付近の再生音量はガクンと落ちる凹凸特性イヤホン」があったとします。後半の説明からは、低音はボワンと膨らみ高音はボンヤリぼやけ……という残念な音が想像されませんか?ですがそれでも、再生周波数帯域としては5Hz-50kHzという超ハイスペックになります。

 

逆に「20Hzから20kHzまでの特性はすごく綺麗に整っているけれどその20Hzから20kHzの範囲の音しか再生できないイヤホン」はどうでしょう?癖のない素直なよい音を期待できそうですよね。でもスペック上は超平凡な「20Hz~20kHz」にしかなりません。

 

とはいえ実際には、「再生周波数帯域は広いけど特性はひどいし音もダメダメ」なんて製品は、ちゃんとしたオーディオメーカーの製品には滅多にありません。そんなものを出していたらオーディオメーカーとしての信頼を損ねてしまいますからね。

 

逆に「再生周波数帯域は普通だけど特性は良好で音も良好」という製品は、ちゃんとしたオーディオメーカーの製品なら普通によくあるパターン。

 

例えばエントリークラスの安価な製品には、突出した再生周波数帯域を得るのに必要な高価な素材や特別な製造技術は使えません。ですがオーディオメーカーとして培ってきたノウハウを活かし、真面目に丁寧にチューニングし、全体の設計を煮詰めれば、普通の周波数帯域内での素直な特性は確保できるのです。

 

またワイヤレスイヤホンだと、Bluetoothコーデックの制限でそもそも20kHz前後までの周波数の音声信号しかイヤホン側に伝送できないことも多いですよね。となればここでも、前述のノウハウや設計の力が発揮されます。

 

すると例えば、
「有線イヤホンで再生周波数帯域は最高40 kHzまで伸びててハイレゾ対応だけどチューニングはいまひとつ」

「完全ワイヤレスだから再生周波数は最高20kHzまでだけどチューニングは見事!」

 

という製品を並べると前者の有線より後者の完全ワイヤレスの方が音がいい!なんてことはあり得ますし、実際にあるんです。

 

というわけですから、「再生周波数帯域」から音の良し悪しや特徴を判断することはできる?と問われたなら、「難しい」というのが答えになります。

 

ですが例えば、信頼できるオーディオメーカーの製品ラインナップの中でハイエンドモデルだけ再生周波数帯域が特に伸びている!みたいな場合、それは注目に値します。

 

そのメーカーの技術やノウハウは当然フル投入されている上で、その価格帯だからこそ採用できるプレミアムな素材や技術によって再生周波数帯域もさらに伸びているわけですから、そのメーカーやシリーズの音を好むユーザーにとって最高の音に仕上げられている可能性が高いのです。


Profile


高橋敦
Takahashi Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。
趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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